マカイバリ 紅茶
マカイバリ 紅茶


2014年11月21日
オーガニックEXPO 2014
*1 マルチング:土表に植物の葉(グァテマラグラス)を敷き詰める農法。詳しくはこちら
*2 ルドルフ・シュタイナー:19世紀〜20世紀初頭のオーストリアの哲学者、神秘思想家、人智学の創始者。
*3 米谷新(よねや・しん)先生:埼玉医科大学病院 アイセンター 教授・センター長。ダージリンでの白内障キャンプについて詳しくはこちら
マカイバリ 紅茶 バナジー氏
ラジャ・バナジー氏の通訳は、ささきようこさんです。
 
ダージリン、ヒマラヤ山脈におけるサステイナビリティ
さらに紅茶栽培にはパーマカルチャーを導入しています。パーマカルチャーとは何でしょうか。ある主要農作物を栽培するときに、他の種類の植生と永続的に、または一時的に密接に関連させて栽培することをパーマカルチャー、永続的な栽培とみなします。マカイバリは新たな高みを目指してパーマカルチャーを導入し、さまざまな日陰を与える多様な植生で構成される6層の中で紅茶を栽培しています。

第1層として、茶園全体の面積の2倍の広さの原生林を持ちます。第2層として、日陰をつくる5種類のネムノキ属の木々を茶畑の中に20メートル間隔で植えます。これらはマメ科の植物なので根元と落葉が自然の窒素の供給源となります。第3層は、5種類のマメ科の植物で一時的に4〜5年ごとに茶園のあらゆる場所に植えます。第4層は、除草剤の役割を担う果実の木や草類などを10ヘクタールの茶畑に対して1ヘクタール分を植えます。紅茶は、第5層となります。そして第6層は、様々な種類の雑草、薬草、いろいろなクローバーで構成されます。

第6層ではマルチング*1が行われ、茶木の列の間に豊富で独自のマルチングが施されます。このマルチングはダージリン特有の土砂降りの雨の影響を受け止め、激しい降雨から土壌を保護し、表土の侵食を防ぎます。またマルチングは雑草を駆除することなく抑制するため、除草のコスト削減に役立ち、しかも種の多様性に貢献します。さらにマルチングにより、水不足の時期には土壌の水分を保持することができ、茶木は苦しい時期を効果的に耐えることが可能となります。最後に大事なことですが、マルチングは3〜4ヵ月で腐敗しますが、その腐植土にも独特の個性を残します。そして、それがお茶を楽しむときの独自の個性となって現れてくるのです。そして、これらすべてに補足する力を与えているのが、茶葉の収穫時に失われる栄養を再び満たすバイオダイナミックの牝牛の肥料です。

マカイバリは、まさに木を植えることによって、知らず知らずのうちに有機栽培の手法の実践のパイオニアとなり、世界的な紅茶の生産者となりました。今日、紅茶は世界70ヵ国で栽培されています。これは進化でした。

さて、なぜバイオダイナミックな牝牛の肥料が重要なのでしょうか。それは牝牛は神聖だからです。角を持つ動物の中で牝牛だけが睡眠中も食物を反芻するからです。角を持つ動物で睡眠中も反芻する動物は牝牛以外いません。雄牛も水牛もヤギもバイソンもアンテロープも睡眠中は反芻しません。牝牛だけが睡眠中もムシャムシャと食べることができるのです。なぜそうなのでしょうか。その秘密は角にあります。牝牛の角には、らせん状の溝があり、それにより太陽からの宇宙エネルギーを保持することができるのです。夜間に消化できる動物は、牝牛以外に存在しません。牝牛は蓄積したエネルギーを使って、特別に進化した4つの胃で真夜中も反芻活動を行うのです。牝牛は効果的に24時間消化できる唯一の動物です。従って牝牛の糞は、世界で唯一の24時間の太陽光を浴びた排泄物なのです。牝牛の糞が優良な堆肥となりバイオダイナミックの調合剤を施すと活性化するのです。この堆肥を受け取った農地は最高に進化した活性化した生命体となるのです。

マカイバリ 紅茶 バナジー氏
バイオダイナミック農法の説明で使われた雌牛のスケッチ。

バイオダイナミック農法とは何でしょうか。ここでは簡単にルドルフ・シュタイナー*2が提唱した方法であるということをお話ししておきましょう。要約してしまえば、バイオダイナミック農法は、経済、政治、環境を視野に入れたホーリスティックな、総体的な農業手法であるということです。そして実践的に総体的とは何かというと、それは健全な土壌のことなのです。これがマカイバリの信条「健全な土壌が健全な人間を創る。」となりました。

最後に、眼科医である米谷先生*3が登場する最近制作された映像をご覧いただき、私の講演を終えたいと思います。私たちの持続可能な努力がこのように日本の最も名高い方々に影響を与え、ダージリンで社会的弱者のために奉仕活動を行うようになり、今や地元で神のように崇拝されているのです。これこそが持続可能な実践が持つ真の力であり、このような真の力が遠い外国にいる他者に影響を与え、平和と親善の中で人類共通の利益のための貢献を生み出すことができるのです。

マカイバリ 紅茶 バナジー氏
講演会の後は多くの方がラジャ・バナジー氏との記念撮影や挨拶のために集まってくださいました。